昔より家は圧倒的に便利になった。
ボタンひとつ。
座ったまま。
動かなくても完結する。
最短距離で生活できる。
快適さだけ見れば、昔より今のほうが遥かに上だ。
ただ、ここにも逆説がある。
便利すぎる家で、人は老ける。
この老けるとは年齢の話ではない。
機能が落ちる という意味だ。
歩く距離が減る。
立つ回数が減る。
しゃがむ機会が減る。
手を伸ばす動作が減る。
頭を使って段取りする機会も減る。
こうして日常生活から小さな刺激が消えていく。
人の身体は、ジムでだけ作られるわけではない。
本来は毎日の生活動作の積み重ねで維持される。
- 台所で立つ
- 洗濯で運ぶ
- 片づけでしゃがむ
- 少し遠回りして歩く
- 手を伸ばして取る
こういう“面倒な動き”が、実は身体を支えている。
便利な家が悪いわけではない。
疲れている人、障害がある人、介護が必要な人には大きな助けになる。
問題は、必要以上に何もしなくていい環境を全員の正解にすること。
若くても動かなければ弱る。
高齢でも動いていれば残る。
やはり年齢ではなく、環境と習慣だ。
本当に良い住まいは、ただ楽な家ではない。
安全を守りながら、自然に身体を使う家。
便利さだけを追うと、
身体は静かに退化していく。
次回、手すりの前に、足を鍛えろ。


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