介護とバリアフリーの逆説|第2話 便利すぎる家で、人は老ける

昔より家は圧倒的に便利になった。

ボタンひとつ。
座ったまま。
動かなくても完結する。
最短距離で生活できる。

快適さだけ見れば、昔より今のほうが遥かに上だ。

ただ、ここにも逆説がある。

便利すぎる家で、人は老ける。

この老けるとは年齢の話ではない。
機能が落ちる という意味だ。

歩く距離が減る。
立つ回数が減る。
しゃがむ機会が減る。
手を伸ばす動作が減る。
頭を使って段取りする機会も減る。

こうして日常生活から小さな刺激が消えていく。

人の身体は、ジムでだけ作られるわけではない。
本来は毎日の生活動作の積み重ねで維持される。

  • 台所で立つ
  • 洗濯で運ぶ
  • 片づけでしゃがむ
  • 少し遠回りして歩く
  • 手を伸ばして取る

こういう“面倒な動き”が、実は身体を支えている。

便利な家が悪いわけではない。
疲れている人、障害がある人、介護が必要な人には大きな助けになる。

問題は、必要以上に何もしなくていい環境を全員の正解にすること。

若くても動かなければ弱る。
高齢でも動いていれば残る。

やはり年齢ではなく、環境と習慣だ。

本当に良い住まいは、ただ楽な家ではない。

安全を守りながら、自然に身体を使う家。

便利さだけを追うと、
身体は静かに退化していく。

次回、手すりの前に、足を鍛えろ。

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