介護とバリアフリーの逆説|第1話 やさしさが能力を奪う時代

70歳で弱る人もいれば、90歳で自転車に乗る人もいる。
この話は年齢の話ではない。
使っているか、使っていないか。 その差の話だ。

最近は段差をなくし、手すりをつけ、できるだけ転ばない家が増えた。
それ自体は悪いことではない。事故を防ぐ意味は大きい。

ただ、ここに逆説がある。

転ばない設計が、転ぶ身体を作ることがある。

段差をまたがない。
しゃがまない。
踏ん張らない。
注意して歩かない。

こうして日常から小さな動作が消えると、身体はその力を少しずつ手放していく。

人間の身体は正直だ。
使う力は残し、使わない力は削る。

これは高齢者だけではない。
30代でも座りっぱなしで脚力は落ちる。
40代でも歩かない生活でバランス感覚は鈍る。
逆に80代でも毎日動く人は驚くほど強い。

問題は年齢ではなく、環境だ。

もちろん、本当に危険が高い人には手すりやバリアフリーは必要だ。
それは命を守る設備になる。

でも、全員に一律で「楽な環境」を与えると、
守っているつもりで、弱らせていることもある。

本当のバリアフリーとは、
何もしなくていい環境ではない。

安全を確保しながら、できる力は残す設計。

転ばないことだけを目標にすると、
人生そのものが座ったままになる。

次回、便利すぎる家で、人は老ける。

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