毎朝、現実を思い出す。
脳出血をしてから、一つだけ毎日続いていることがある。
朝、目が覚める。
そして数秒後に思う。
「あ。」
「あ、そうだった。」
「私、脳出血したんだった。」
一瞬だけ忘れている。
でも、体を動かした瞬間に思い出す。
夢じゃなかった。
現実だった。
この感覚を説明するのは難しい。
記憶が無くなっているわけじゃない。
受け入れていないわけでもない。
ただ、寝ている間だけ普通の自分に戻っているような感覚なのだ。
だから毎朝、一回だけ現実に引き戻される。
「そうか。」
「もう前の体じゃないんだ。」
そんな朝を何百回も迎えてきた。
不思議なのは、麻痺よりもめまいの方が気になること。
左手は思うように動かない。
でも、それは見れば分かる。
だから案外受け入れやすかった。
問題はめまい。
歩ける。
運転もできる。
仕事もしている。
だから周りには分からない。
でも、自分だけは分かる。
「ああ、今日もちょっと揺れてるな。」
そんな小さな違和感が毎日ある。
これが一生続くのかな。
そう思う日は、正直ある。
私は昔の自分に戻りたいとは、もう思っていない。
それは第二話で降参したから。
でも、
落ち込まないわけじゃない。
カオスババアだって人間だ。
調子がいい日もあれば、
「今日は何もしたくない。」
そんな日もある。
昔の私は、
そんな自分を責めていた。
もっと頑張れ。
もっと動け。
もっと早く元に戻れ。
そうやって、自分を追い込んでいた。
でも今は違う。
今日は落ちる日。
それだけ。
明日も落ちるかもしれない。
でも、来週は笑ってるかもしれない。
人生なんて、その繰り返しだ。
脳出血は、私からたくさんのものを持っていった。
でも、一つだけ教えてくれたことがある。
人は毎日同じじゃなくていい。
元気な日もあれば、
動けない日もある。
笑う日もあれば、
泣く日もある。
全部まとめて人生なんだ。
だから今日の私は、
少し落ちていてもいい。
そう思えるようになった。
…とはいえ、早くめまいはどっか行ってほしいけどね。
その日が来るまで、
カオスババアは今日もぼちぼち生きる。
知らんけど。
▶ カオスババアシリーズ
- 第1話:脳出血
- 第2話:降参した日
- 第3話:毎朝、現実を思い出す。


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