第1話|テレビを借りた冬

何十年ぶりかに見たオリンピックで、心が揺れた。

今はボートの上。
海の音を聞きながら氷を見る。

でも、原点は北海道。

❄️ 旭川

屋外リンクだった。

マイナスの世界。
吐く息が凍る。
まつ毛が白くなる。

そこで私はフィギュアを習っていた。

ジャンプもやった。
スピンもやった。
大会も出た。

下手だったけど。

でも覚えている。

あの氷の匂い。
エッジの感触。
内か外かを追いながら円をなぞった時間。

あの頃は「コンパルソリー」が競技に含まれていた。

地味で、
観客には分からなくて、
でも全部が基礎だった。


家にテレビはなかった。

オリンピックは4年に一度、
テレビを借りて見る特別な夜だった。

そこで出会った。

⛸️ 伊藤みどり

高さも凄い。
でもそれ以上に飛距離。

直角に上がって回る人じゃない。

前に進みながら空を飛ぶ。

着氷しても流れが死なない。

リンクを横断する。

次元が違った。

小4の私は震えた。

「こんなジャンプ、あるんだ。」


私はシングルアクセルの手前で止まった。

跳べるか、跳べないか。

そのタイミングで横浜に引っ越した。

2年で終わったフィギュア人生。

でも終わらなかった。

氷の記憶は、ずっと残っていた。


今年、久しぶりにオリンピックを見た。

ペアに驚いた。
アイスダンスに驚いた。

でも結局、
私の基準はみどり。

エッジを見ていた。
内か外かを追っていた。
飛距離を見ていた。

身体は覚えている。

小4の氷の少女は、まだいる。

ボートの上でも。

この話はAya Storyとして、氷の記憶シリーズに続きます。

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