第2話|15年落ちでも安心する理由

🚙 Nissan X-Trail は15年落ちだ。

最新機能はない。
静粛性も、燃費も、きっと今の車の方がいい。

それでも。

この車を運転すると、なぜか安心する。

不思議なくらい、落ち着く。


安心はスペックから生まれない。

安心は、感覚から生まれる。

エンジン音。

アクセルの重さ。

ハンドルの感触。

ドアを閉めたときの音。

身体は覚えている。

人の記憶は、言葉よりも
匂いと音と振動に残る。

この車には、義父の時間が積まれている。

だから安心する。


私は普段、「モノは資産か消耗品か」と考える。

減価償却。

再販価値。

耐久年数。

でもこの車は、その枠に入らない。

これは中古車ではない。

これは“時間の容れ物”だ。

15年という時間。

義父が運転した時間。

家族を乗せた時間。

日常を繰り返した時間。

時間は見えない。

でも、消えない。


2024年。

私は脳出血で倒れた。

戻ってきたとき、
世界は少し違って見えた。

命は当たり前じゃない。

日常は奇跡だ。

その年に義父は旅立った。

そして私は、この車を運転している。

走りながら、確認している。

私は生きている。

義父も、生き切った。

安心は、そこから来ているのかもしれない。


15年落ちでもいい。

新しくなくていい。

積み重なった時間は、
新品では手に入らない。

安心は買えない。

でも、受け継ぐことはできる。

続く。

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