私はボートの上から見ている。
父が滑る。
息子が挑戦する。
私は参加しない。
脳出血をしたから?
違う。
その前からできなかった。
握力もなかったし、
バランス感覚も怪しかったし、
そもそもああいう“水の上スポーツ”は得意じゃない。
やりたい気持ちはある。
でも、出来るかと言われたら、無理だった。
だからこれは、
失った話じゃない。
もともと、私の競技じゃない。
家族の中で、
全員が同じ土俵に立つ必要はない。
父は滑れる。
カイトは吸収する。
アルビーは追いかける。
私は、見ている。
それだけ。
でもそれがゼロか?
違う。
誰かがちゃんと見ているという安心。
成長を記録している人。
空気を吸って、空の色を覚えている人。
それが私だ。
昔の私は、全部やりたがった。
前に出たい。
参加したい。
置いていかれたくない。
でも今は分かる。
家族はチームだ。
ポジションが違うだけ。
私は滑れない。
でも、この朝の風景を一番覚えているのは、多分私だ。
それでいい。
スゲエな。
と、言える場所にいる。
それでいい。


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