母の家計簿から始まった人生|第1話 母の家計簿が嫌いだった

私は母の思想を、あとから理解した。

子どもの頃の私は、母のやっていることがあまり好きではなかった。

家にはいつも
婦人之友と羽仁もと子全集が並んでいた。

母は紙の家計簿をつけていて、
友の会の最寄会にも通っていた。

最寄会では、賛美歌も歌う。

私の周りには友の会の人なんて誰もいない。
子どもの私は、それが少し宗教っぽく感じて、正直恥ずかしかった。

しかも母は、何でも手作りだった。

服も、食べ物も、ほとんど全部。

当時の私は、市販のお菓子や既製品に憧れていた。

友達が持っているものが羨ましくて、
母の生活はどこか時代遅れで、窮屈に見えた。

私は母のようにはなりたくないと思っていた。

母はいつも、紙の家計簿をつけていた。

毎日の生活を、きちんと整えていた。

でも子どもの私は、
それが何を意味しているのか全く分からなかった。

ただ「細かい人だな」と思っていた。

私は母のように家計簿をつけることもなかったし、
友の会に入りたいと思ったこともない。

母の生活は、私とは違う世界のもののように見えていた。

でも今になって思う。

母がやっていたのは、
節約でも、我慢でもなかった。

生活を設計するという思想だった。

そして今、私はその思想の延長線上にいる。

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