大昔、私がフィギュアをしていたころ。
ペアとアイスダンスは、どこかしっくりこなかった。
ぎこちない。
距離が不自然。
男女が密着する競技。
それが日本人同士だと、どこか固い。
技術以前に、空気が緊張している感じがあった。
当時の私の印象は、そんなものだった。
だからシングルが一番自然だった。
一人で完結する。
個の競技。
それがしっくりきた。
久しぶりに見た今回のオリンピック。
一番驚いたのはペアだった。
⛸️ 三浦璃来 × 木原龍一
密着が自然だった。
呼吸が合っている。
リフトが高いのに、重く見えない。
持ち上げているというより、流れの中で上がる。
ぎこちなさがない。
距離に無理がない。
違和感が消えていた。
これは技術の進化だけではない。
文化が追いついたのだと思った。
アイスダンスも同じだった。
昔は外国の競技だった。
日本人にはまだ遠い。
そんな感覚があった。
でも今は違う。
距離が自然だ。
身体の預け方が柔らかい。
空気が固くない。
氷の上で、ちゃんと溶け合っている。
私は本気でびっくりした。
そしてもちろん。
シングルも言うまでもなく素晴らしかった。
回転数は増えた。
技術は進化した。
スピードも上がっている。
でも私は相変わらず、
エッジを見る。
着氷後の流れを見る。
飛距離を見る。
基準は変わらない。
見ていなかった時間のあいだに、
日本フィギュアは進化していた。
回転数だけではない。
距離の取り方も。
空気の作り方も。
文化も。
しっくりこなかったものが、
しっくりくるようになっていた。
それが今回の一番の衝撃だった。
この話はAya Story「氷の記憶」シリーズに続きます。


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