ゴールドコーストで脳出血を経験|ボート生活7年目に起きた現実と再設計 2話目

脳出血

第2話|なぜ私たちは陸に降りなかったのか

退院したとき、理想の選択肢はなかった。

あったのは、条件だけだった。


まず身体だった

左手に麻痺は残った。

キーボードの薬指と小指は鈍い。
柔らかいものを潰してしまう。
すぐ疲れる。

でも歩ける。
日常生活は回る。

強い麻痺が残っていたら、ボート生活は成立しなかった。

芋も言っていた。

もし麻痺が重ければ、
施設を探すか、アパートを借りるつもりだったと。

選択は理念ではない。

身体の状態がすべてだった。


家族の構造が変わっていた

私が倒れている間に、
ボートに関する責任の一部が15歳の長男に移っていた。

ロープを引く。
テンダーを動かす。
力仕事を担う。

退院したとき、私はそれを担う立場ではなかった。

私は弱くなった。

でも家族は強くなっていた。

この再配置がなければ、続けられなかった。


周囲の反応

正直に言うと、
友人も、母も、姉も、ボートで暮らし続けることには否定的だった。

無理もない。

脳出血を起こした人間が、
揺れる海の上に戻る。

心配するのは当然だ。

でも最終的に決めるのは、
私たちの生活条件だった。


条件が揃っていた

・麻痺が軽かった
・家族の役割が再配置された
・固定費が抑えられた

条件が揃っていた。

だから続けた。

もし一つでも欠けていたら、
迷わず陸に移っていた。

再設計とは、理想を選ぶことではない。

壊れた状態で、回る形を選び直すことだ。

次回は、
退院後に気づいた「命金」の話を書く。

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