正直に言えば、
ボート暮らしに引け目を感じる瞬間はある。
普通の家じゃない。
庭もない。
住所だって説明がいる。
子どもたちはどう思っているだろう、と考えることもある。
でも朝を見る。
登校前。
父がウォータースキーで水を切る。
カイトがそれを見て学ぶ。
アルビーが転びながら追いかける。
私はボートの上から眺めている。
この時間を、
家の広さで買えるか?
無理だ。
資産には種類がある。
預金。
不動産。
株式。
でももう一つある。
経験資産。
思い出の密度。
「あの朝さ」と言える記憶。
10年後、
多分家の広さは思い出さない。
でも水面の光は覚えている。
父の声は覚えている。
転んだ悔しさも、立てた瞬間も覚えている。
劣等か資産か。
外から見れば、変わった暮らし。
でも内側から見れば、
濃い。
圧倒的に濃い。
私は滑れない。
でもこの朝の空気を一番覚えている。
それも資産だ。
家族は、
同じ屋根で育つんじゃない。
同じ時間で育つ。
このシリーズは⑤-家族・人間関係の前提にまとめていく。


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