親友と、なんてことない話をしていた。
「私さ、生死彷徨ったのに三途の川とか見てないんだよね」
軽く言っただけだった。
そしたら、親友が普通に返してきた。
「え、見てたよ。お父さんに追い返されたって言ってたよ」
え?
一瞬、意味が分からなかった。
私は、その記憶がない。
そんな話をした覚えもない。
でも、親友ははっきり覚えている。
「三途の川でお父さんが出てきて、“まだだ”って言われて戻ってきたって」
さらに追い打ちみたいに、
「ICUで人工呼吸器つけてたよ」
えーーーーー。
そこも、知らなかった。
私の中では、完全に途切れている時間。
でも、その間も私は喋っていて、
何かを見ていて、
周りにはちゃんと残っている。
記憶だけがない。
20年前に亡くなった父。
こんな形で出てくるとは思っていなかった。
信じるとか、信じないとかじゃない。
ただ、
「覚えていない自分の言葉が、親友の記憶に残っている」
その事実だけがある。
私はそのとき、何を見ていたのか。
それは分からない。
でも一つだけ確かなのは、
戻ってきている、ということ。
この話は、不思議な体験としてじゃなくて、
ただの“記録”として残しておく。
この話は⑩ 生存設計の前提カテゴリーに置いてあります。


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