第7話|基準は、あの飛距離

久しぶりにオリンピックを見て、
空白の時間が埋まった。

ペアも、アイスダンスも、
文化ごと進化していた。

シングルも、技術は確実に上がっている。

4回転が当たり前になり、
回転効率は洗練され、
着氷も軽い。

それでも。

私はどうしても、比べてしまう。

⛸️ 伊藤みどり

高さ。

飛距離。

着氷後の流れ。

リンクを横断する推進力。

あのジャンプが、私の基準になっている。


公平ではないと思う。

思い出も重なっている。

旭川の屋外リンク。

テレビを借りて見たオリンピック。

NHK杯で生で見た震え。

小4の自分。

全部込みだ。

でも、それを差し引いても。

みどりは別格だと思う。


そして今。

みどりは今も滑っている。

全盛期の爆発ではない。

でも、楽しそうに滑っている。

続けている。

それが一番かっこいい。


私はアクセルを跳んでいない。

途中で止まった。

でもワクワクは残っている。

48歳で床でスピンを回して、
3回でも回れて、
楽しいと言える。

未完でもいい。

終わっていなくてもいい。


氷の少女は、まだいる。

ボートの上でも。

そして基準は、あの飛距離のまま。

それでいいと思っている。

Aya Story「氷の記憶」シリーズ完。

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