見守る母という役割|できなかった私と、それでも在る場所【第4話】

私はボートの上から見ている。

父が滑る。
息子が挑戦する。

私は参加しない。

脳出血をしたから?

違う。

その前からできなかった。

握力もなかったし、
バランス感覚も怪しかったし、
そもそもああいう“水の上スポーツ”は得意じゃない。

やりたい気持ちはある。

でも、出来るかと言われたら、無理だった。

だからこれは、

失った話じゃない。

もともと、私の競技じゃない。


家族の中で、

全員が同じ土俵に立つ必要はない。

父は滑れる。

カイトは吸収する。

アルビーは追いかける。

私は、見ている。

それだけ。

でもそれがゼロか?

違う。

誰かがちゃんと見ているという安心。

成長を記録している人。

空気を吸って、空の色を覚えている人。

それが私だ。


昔の私は、全部やりたがった。

前に出たい。
参加したい。
置いていかれたくない。

でも今は分かる。

家族はチームだ。

ポジションが違うだけ。

私は滑れない。

でも、この朝の風景を一番覚えているのは、多分私だ。

それでいい。

スゲエな。

と、言える場所にいる。

それでいい。

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