第2話|なぜ、ここまで落ちるのか

──努力不足では説明できない構造

年収200万、55歳、非正規。
この状況を見ると、
多くの人は無意識にこう考える。

「どこかで選択を間違えたんじゃないか」
「努力が足りなかったんじゃないか」

でも、実際はもっと単純で、
個人の問題として処理できない構造がある。


日本の雇用は「やり直し」を想定していない

日本の雇用システムは、
最初からこう設計されている。

  • 新卒一括採用
  • 年功序列
  • 終身雇用(だったもの)

つまり、
最初に乗ったレールを外れない前提

一度でも外れると、
「戻るルート」がほぼ用意されていない。


非正規は「一時的」のはずだった

本来、非正規雇用は

  • 若年層のつなぎ
  • 主婦の補助労働
  • 学生のアルバイト

という想定だった。

ところが現実は、
非正規のまま年を取り、
出口のない状態で固定化される人が増えた。

そして40代、50代になると、

  • 正規には年齢で弾かれ
  • 非正規は賃金が上がらず
  • 解雇されやすくなる

静かに、選択肢が消えていく。


解雇歴は「能力」より重く見られる

日本の採用では、
スキルよりも
**経歴の“きれいさ”**が重視される。

  • 解雇された
  • 職歴が途切れている
  • 転職回数が多い

この時点で、
理由を聞く前に落とされる。

本人が説明する機会すら、
与えられないことも多い。


55歳という年齢が、決定打になる

55歳は、

  • 体力は落ち始める
  • 教育コストをかけたくない
  • 長く使えない

という理由で、
企業側からは真っ先に外される年齢。

しかも日本には、
「中高年を再設計する制度」がほぼない。

若者向け支援はある。
障害者向け支援もある。
子育て世代向け支援もある。

55歳・独身・非正規男性は、
どこにも当てはまらない。


これは「落ちた」のではなく「落とされた」

重要なのはここ。

この人は、
突然転落したわけじゃない。

  • 少しずつ
  • 静かに
  • 誰にも気づかれないまま

レールが削られていっただけ。

そして55歳になった時、
「もう無いですよ」と
初めて現実を突きつけられる。


これは特別なケースじゃない。
この構造の上を歩いている人は、
今も大量にいる。

まだ表に出ていないだけだ。


第1話で示したのは「数字」。
第2話で見えてきたのは、
その数字が生まれる仕組み

次は、
「じゃあ、大学院卒はなぜ助けにならなかったのか」。

学歴神話が、
一番残酷に裏切られる話に入る。

(つづく)


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