2-19 大切な友人が、毎日散歩に付き合ってくれた

退院してから、
外を歩くようになった。

一人ではなかった。
大切な友人が、毎日付き合ってくれた。

時間は、だいたい朝8時ごろ。
私は、ボートに住んでいる。

芋が、
ゴムボートで
桟橋まで送ってくれていた。

エンジンの音。
朝の空気。
水面の光。

短い移動だった。

桟橋に着くと、
大切な友人がもう来ていた。

「おはよー」

それだけ。

芋は、
そこで引き返す。

その背中が、
少しだけ
軽くなったように見えた。

肩の荷が、
ほんの少し
下りた感じ。

私は、
友人と
歩き始める。

海沿いの道。
信号はない。
車の音も少ない。

あるのは、
波の音と風だけ。

約束は、
「歩くこと」だけだった。

距離も、
時間も、
目標もない。

歩く速さは遅かった。
数分で立ち止まる日もあった。

海を見て、
深呼吸して、
また少し進む。

それだけ。

調子が悪そうな日も、
理由は聞かれなかった。

励ましも、
評価もない。

ただ、
同じ方向に
歩いた。

私は半年間、
運転を許されていなかった。

だから、
一人では
どこにも行けなかった。

でも、
この時間だけは違った。

病院では、
私は「患者」だった。

でも、
海沿いを歩いている間は、
ただの人だった。

通り過ぎる人たちは、
私を見ていない。

誰も、
私の病歴を知らない。

それが、
妙に楽だった。

私は、
自分が回復している実感を
持てていなかった。

でも、
体は
少しずつ
前に進んでいた。

ただ、
歩いたという事実だけが、
毎日、
積み上がっていった。

回復は、
派手じゃない。

こういう
何でもない時間が、
あとから振り返ると、
確かに
土台になっている。

私は、
その中を
歩いていた。

#回復の記録 #退院後 #朝の時間 #リハビリ #支え


Short English Version

Around 8 a.m.,
a close friend walked with me every day.

My husband dropped me off by dinghy.
Then we just walked.

That quiet routine
slowly brought me
back to ordinary life.

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