芋がボートを作り始めたのは、2015年。
子どもはまだ小さく、私は仕事もしていなかった。
本当に、文字どおりの極貧だった。
5ドルが払えなくて、プレイグループに参加できない。
日本帰省なんて、考える余地もない。
スーパーではカードがdeclineばかり。
子どもの友達の誕生日会も、プレゼントを買うお金がなくて、仮病を使って欠席したこともある。
綺麗な話じゃない。
でも、これが現実だった。
芋はその頃、働けばボートは作れない。
時間がなくなるから。
でも、働かなければお金がない。
資材も買えない。
つまり、どちらを選んでも詰む状況だった。
実際、芋は自分の誕生日に、ビール1本を買うお金すらなかった。
いつも、すっからかん。
それでも、借金はしなかった。
ローンも、分割も、カードも使わなかった。
少しずつ。
本当に少しずつ。
ギリギリのラインを、何年もかけてこじ開けて、
最終的にボートを完成させた。
派手じゃない。
効率も悪い。
今どきじゃない。
でも、芯は一切ブレていない。
「借りて早く手に入れる」じゃなく、
「時間がかかっても、折れずに続ける」を選んだ。
もしあの時、
「今だけだから」
「将来なんとかなるから」
そう言って借金していたら、
ボートはもっと早く完成していたかもしれない。
でも、人生は確実に軽くなっていなかった。
借金をしなかったから、
判断を誤らずに済んだ。
焦らずに済んだ。
辞める・続ける・待つ、
その全部を自分の意思で選べた。
私は今でも思う。
あの極貧時代を、借金なしで通り抜けたことが、
一番の財産だと。
ただ、正直に言うと。
今も芋は燃え尽き症候群の真っ只中にいる。
それが、正直、むかつくこともある。
長い時間をかけて、
折れずに、借りずに、
一つのことをやり切った人ほど、
ゴールのあとに立ち止まってしまう。
失敗したからじゃない。
やり切ったからだ。
尊敬と、苛立ちは同時に存在できる。
私は今もイライラするし、文句も言う。
でも、それでもはっきり言える。
私は芋を、本当に尊敬している。
逃げなかった。
借りなかった。
折れなかった。
家族の未来を前借りしなかった。
それは今の停滞で消える価値じゃない。
時間はかかる。
次のステージも、きっと簡単じゃない。
でも、強さはもう証明されている。
私はそれを、
芋の背中でずっと見てきた。
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